いつか読書する日

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早朝に牛乳配達をして、市電を追いかけるように自転車をこぎ、パート先のスーパーに向かう。仕事が終わって家に帰り、ラジオを聴きながら本を読む。そんな静かに流れる日々を過ごす50歳独身、大場美奈子(田中裕子)は、しかしある思いを胸に秘めていた。そして、末期がんの妻、容子の看病を続ける高梨槐多(岸部一徳)もまたある思いを抱き続けている。
この映画から感じる穏やかな空気とか、ゆっくりと流れる時間とか、全部好きなのだ。淡々と流れるものにちょこんと刺激を与えることで、物語は一気に流れ出していく。私が映画を見ていて良かったなぁと心底思うのはそんな作品と遭遇した時なのだ。
そういや学生のとき、盛岡のミステリー映画祭で見たんだったか。あれあんときなんて書いたっけと思って昔の文章を探したら何にも感想を書いてなかった。あらま。
ちなみに、岸部一徳のファンになったきっかけはこの映画。して、田中裕子のファンになったのもまたこの映画なのだ。印象深いシーンは数え切れないくらいあるのだけれど、あえておいらは本編からちょっと外れた児童相談所での会議シーンを挙げたい。ここでの一徳、「Yes」と数回答えるだけなんだけれど、その「Yes」にこめられた思いがびしびしとスクリーンから伝わってくる。これは何年たっても忘れられない名シーンじゃなかろうかと思っている。